贈り物を包んだ風呂敷を抱えて「ごめんください」と声を掛けて、
世話になっている人をその宅に訪う。
その風景はいつの頃のことだったのか。
いまなら綺麗にラッピングされた贈り物をロゴ入りの上質の紙袋にいれて、
‘ ピンポーン ’。いまは宅急便で送りつける。

風呂敷は時代遅れの、取るに足らない〈 小物 〉かもしれない。
しかし大事なものを包み、しっかりと結んで運び、
それを大事な人の前でゆるりと開き、取り出して差し上げる。
その風情はこの国の様式美のひとつである。
正月は古風というか、伝統的なものごとを見開きしながらこの先の日々に想いを馳せる一時にふさわしい。